2013年06月08日

真に恐ろしい相手は親しい人間なのかもしれない ――「だましの手口 知らないと損する心の法則」を読んで――

母さん助けて詐欺」(「振り込め詐欺」「オレオレ詐欺」)が多発しているようだ。

また、振り込め詐欺ですって。ホント、信じられない。あれほど、報道されているのに、どうして次から次へとだまされる人がいるのかしら?

西田公昭氏の「だましの手口 知らないと損する心の法則」には、件の詐欺についての報道を視た人物の抱くこのような感想が載せられている。実際、私の身近にもこう考えている人物がおり、この人も何時か騙されてしまうのではないかと内心ヒヤヒヤしている。

さて、この本には、様々な騙しのテクニックについての解説、並びに騙される側が罠にはまる心理について解説されている。それだけでも充分に本書を読む価値は在るのだが、私はそれとは少し違う箇所に衝撃を受けた。

例えば、161ページに掲載されている事例、「ドア・イン・ザ・フェイス」と呼ばれる騙しのテクニックの解説として紹介されている。「ドア・イン・ザ・フェイス」は、まず最初に、断られる事が確実な「お願い」をし、次にもう少し簡単な「お願い」に切り替える、というものだ。騙される側は、「最初のお願いを断った」という負い目から、2度目の要求に応えてしまう。この事例での「騙す側」と「騙される側」は、なんと恋人同士である。騙す側である彼女は最初、彼氏に高価な指輪をおねだりする。そんな経済的余裕のない彼氏は断るが、「彼女を喜ばせる事が出来なかった」という負い目を感じてしまう。結果、次に彼女が注目した、(最初の物と比べると)安価な指輪を「買ってあげる」と約束してしまう。

或いは、180ページの「騙す気はなく、100%の誠意を持って、アピールしてくる」例。つまり、騙す側自身も騙されているという例で、キャッチセールスやネットワーク商法(マルチ商法)等に見られるという。高価な補正下着を(騙されて)買ってしまった娘を信じて、その母親までその商品を購入してしまった例がこれにあたるそうだ。

「騙してくる相手」というのは、ある一定の共通項が存在するように思える。例えばセールスマンであるとか、投資の勧誘、何らかの団体やその構成員、或いは「母さん助けて詐欺」のような「正体を偽り、その確認が出来ない」人。しかし、これらはそうではない。どちらも、騙される側である自分自身と親しい、信頼している筈の人物である。

そう、真に恐るるべきは、「親しい相手からの騙し」なのである。

このような「騙し」にかかってしまう理由を、著者は、"私たちは、自分を愛してくれている親や兄弟をはじめ、いわゆる身内意識のある家族や親戚、それから親友や恋人は、よもや自分をだまそうとはしないだろうと思っています"と解説している。

一つ目の例を「騙し」と捉える事に抵抗を感じる方もいるかもしれない。「いや『騙し』じゃないよ、ただの恋愛上の駆け引きだよ」と。しかし、そこで使われている手法は、詐欺等で使われている物と全く同じなのだ。彼女側に「騙そう」という意志があったかどうかに拘わらず、やっている内容的には、変わらないのだ。

私を、あなたを騙そうとする相手は電話をかけてくる相手ばかりではない。セールスマンや怪しげな団体の構成員ばかりでもなければ、色仕掛けを仕掛けてくる人物ばかりでもない。もっと身近な、もっと親密な相手だって、「騙そう」と狙ってくるかもしれないのだ。

おねだり
ところで「おねだり」って漢字で書くと「お強請り」と「強請り(ゆすり)」の字が入るんだね。ある意味、真理を突いてる。
posted by 天井冴太 at 01:51| Comment(0) | TrackBack(0) | 今日のやらなかった事 | 更新情報をチェックする
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