コンピュータは本来数値("0"と"1"の2種)しか扱う事が出来ない。そこで、文字一つ一つに番号を割り当てる事で、コンピュータ上で文字を扱えるようにしている。例えば、"a"に1、"b"に2……"z"に26と割り当てれば、"2 12 15 7"で"blog"と言う文字列を表現出来る。文字の符号化とは、このような「それぞれの文字に数値を割り当てる」事を言う。"ユニコード"(Unicode)とは、その世界的な決まりの1種であり、世界中の文字を符号化しようという規格である。
本書は、そのユニコードの規格制定の内側を記した物である。
日頃PCを使っている人の中で、ユニコード等の符号化文字集合(所謂文字コード)規格やその技術を知る人は多くないだろう。ましてや、その規格制定の場でのやりとりとなると。日頃お世話になっていながらも、なかなか意識する機会の無い部分を知る事の出来る絶好のチャンスである。
「国際標準化なんて、ドンパチと騙し合いの世界だからなあ」
「戦い…、戦記ですね」
本書に書かれている規格制定の場は、こう後書きに記されているとおり、正に「戦い」だった。
例えば、日本側の要求を通す為に他国(多言語)の要求に便乗したり、他国への単純な好悪勘定からその国の権限を認めようとしなかったり。或いは、自国の用いている言語に関する部分の規格制定にその言語のユーザーが関わっていない点を突いて、やり直しを求めたり。
地道に文字一つ一つに番号を振っていくだけかと思っていたので、このような政治的な争いの場であるとは思わなかった。
日頃お世話になっている規格がどのように決められているのか、その場でどのようなやりとりが成されているのか。そういった事に思いを馳せるのも良いのではないだろうか。