このように見えている人がいるのをご存じですか?
という一文と、同一内容で色味の異なるイメージが複数種載った表紙が先ず目を引く。
色弱者や高齢者の『物の見え方』、そしてそのような人々にも分かり易い色の使い方――色のユニバーサルデザイン――について記されているのが本書である。
そもそもの色がもたらす役割や、色とはどういう仕組みで認識されるのかといった点から解説されている、チュートリアルとしての側面の強い本である。
一般色覚者の場合と色弱者の見え方をシミュレートした物、それをどのように変えれば色弱者にとっても見やすくなるかの例を示す写真も幾つか掲載されており、必見である。
此処に引用したのは68頁に掲載されている例だが、一般色覚者から見たらそれ程違わない場合でも、色弱者(この場合は赤色の光が見難いP型)からしたら劇的に分かり易くなる事が示されている。
もし、現在あなたに色覚の異常がなくても、あくまで少数派だからと、他人事と決めつける訳にもいかない。後天的に色覚に異常をきたすケースも有り得るし、そもそも、人間誰でも加齢により細かい色の違いが判別出来なくなっていくのだ。自らが作った物が、将来、自分に牙を剥く事もるのだ。
表紙には、印刷物やウェブを制作する自治体、企業、クリエイター必読
と書かれているが、それも頷ける。プロに限らず、趣味で印刷物やウェブページを行う個人にとっても必要な知識なのではないだろうか。
そういったデザインをする予定が無くとも、色弱者の見え方の例を眺め、自らと全く異なる「世界の見え方」の人が居るのだという事を知るだけでも価値が有るだろう。
- 一般色覚者
- 色弱者
- 本記事では、紹介している書籍内にて定義されている言葉を使用している。
- 少数派
- 単純に「半数に達していない」というだけの意味。あしからず。