最近、「ライト、ついてますか――問題発見の人間学」という本を読んでいる。その中では、問題に対する解決策は、往々にして不適合を見落としてしまう物だと説かれている。ここで言う不適合とは、その解決策が齎してしまう(解決策を考案した時点では判明していなかった)新たな問題を指す。この時、人はその高度な適応能力故に、問題を問題と認識出来ない事がよくある。不適合の見落としを防ぐ為には、自分たちとは別の、新たな視点で物事を見てみる必要がある。
「新たな視点で物事を見てみる」と聞いて、私は「馴質異化」という言葉を思い出した。同時に、それと対になる「異質馴化」という言葉も。
「馴質異化」とは、よく見慣れている物を初めて見る物として捉え直してみる事を言う。「異質馴化」はその逆、初めて見る物を、さも、よく見かけている物のように捉えてみる事だ。「ライト、ついてますか――問題発見の人間学」のそれは問題解決(不適合の見落としの防止)の為の技法としての物だが、馴質異化、異質馴化は、もっと広い、アイディアの発想法として用いられる物だという。
まぁアイディアを得たい時というだけでなく、時間潰しとしても有用だ。例えば毎日の通勤通学の途中で、よく目にする何某かに対して「馴質異化」を試みてみる。そうすると、今迄、気にも留めていなかった物事に気づける。特に何か準備が要るわけでもなく手軽に行えるし、「そういえばアレは何故ああなっているのだろう?」という疑問の海に身を浸してみるというのも、なかなかに楽しい経験だ。